大貫美鈴 著「宇宙ビジネスの衝撃」刊行記念イベント@池袋(2018.6.7)に参加してきた(1)「宇宙が国から民間の経済開発の場になっていた。」
こんにちは。wakuphasです。
先日、大貫美鈴さんの「宇宙ビジネスの衝撃」刊行記念イベントに参加してきました。
内容は著書「宇宙ビジネスの衝撃」の内容を元に2000年以降の、特にここ2,3年の宇宙産業に起きた衝撃的な事実を10連続で紹介していくといったものでした。
著書自体は、海外の動向から日本の現状まで非常にわかりやすくまとめられているので、今後の宇宙ビジネスの流れを予測するための入門書としてかなりオススメです。
大貫美鈴さんは清水建設宇宙開発室、JAXAを経て独立。現在は宇宙ベンチャーのスペースアクセスCEOであり、宇宙ビジネスコンサルタントとして活躍しているお方です。
それではイベントで得た情報を自分なりにまとめていきます。
(1)「宇宙が国から民間の経済開発の場になっていた。」
つい最近まで宇宙開発はそのリスク、コストの高さから国が行うものであるという認識が当たり前でした。
しかし2016年時点で世界の宇宙産業売り上げのうち77%は商業宇宙活動によるものであり(日本航空宇宙工業会調べ)、既に政府関連の需要は23%以下となっています。
この事実は未だ90%近くを官需に頼っている日本にとっては驚きでしょうが、確実に宇宙は民生分野での利用が増えていっているのです。
そしてこの立役者として最も宇宙業界に影響を与えている人物と言えば、SpaceXのCEOであるイーロンマスクと、Blue OriginのCEOであるジェフベゾスでしょう。
SpaceXは、2002年に宇宙産業に参入し、その目的はもちろん人類の火星移住です。
Falcon 9 (10-20t)、Falcon heavy (20-50t)と着実に輸送機のペイロードを増やしています。また製作中のBFRが完成すれば150tまで積載可能とも言われています。
Blue Origin
Blue Originは、Amazon CEOのジェフベゾスが2000年に立ち上げたベンチャーです。あまり知られていませんが、実はSpaceXよりも先に参入しています。
その目的は宇宙で100万人が働く環境を作ること。そのためにまずは月への物資輸送などを目標としています。
SpaceXほど大々的に公表はしていませんが、水面下で着実に実験を繰り返しており、特にBE-4といったエンジン開発に力を注ぎ、既にULA (アメリカの政府系衛星の打ち上げを一手に担ってきたボーイングとロッキード・マーチンの合弁企業)へ提供する契約を結んでいます。
これら2つの企業のロケットに共通する最も重要なコンセプトは、なんといっても再利用可能である点です。再利用可能な輸送機として有名なものに、スペースシャトルがありましたが、予定よりも打ち上げ頻度が低く、維持費が嵩んだことから2011年に退役しています。
結果的に使い捨てロケットよりも高額になってしまったスペースシャトルですが、そのコンセプト自体は受け継がれ、既に上記の2社によって既存のロケットよりも遥かにコストパフォーマンスの良いロケットが作られています。
再利用とはなんぞや、という方に一見は百聞にしかず。逆再生ではないです笑。
特にSpaceXのFalcon heavyでは、コスパを最大化するために、冗長性のないエンジン1台よりも、小型エンジンをたくさん使用して冗長性のある同規模の強力なエンジンを組み上げる方が、修理もしやすく失敗が少ないという発想から、計27基のエンジンが搭載されています。これによって最大6基が故障しても問題ないとのこと。
日本は...
ちなみに日本のJAXAと三菱重工によるH-IIAロケットは、Falcon heavyと同程度の予算 (100億円) でペイロードは15t程度となっています。
ただ、2020年に第1号機打ち上げ予定の日本の次世代H3ロケットは、現行機の半額程度の50億円で、年6回打ち上げ、ペイロードは40-65tとなっており、非常に高性能であると期待されます。
・打ち上げ費用の削減
・静止軌道打ち上げ能力の増強
・打ち上げ時の安全性の向上
・年間打ち上げ可能回数の増加
の4つを同時に達成して、宇宙開発における日本の自立性を確保すると同時に、商業受注を見据えた国際競争力の高いロケットになりそうです。
またホリエモンのInterstellar technologies inc.など輸送機開発に力を入れる宇宙ベンチャーも複数出てきており、今後に期待です。
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