JAXAシンポジウム2018@有楽町(2018.7.5)に行ってきた(1)
こんにちは。wakuphasです。
今日はJAXAの主催するJAXAシンポジウム2018「Discovery NEW! with new JAXA」に参加してきました!
元宇宙飛行士の山崎直子さんやBLUE ORIGINのTedさんを始め、メディアアーティストの落合陽一さんもパネリストとして参加しており、非常に楽しい2時間でした。
会場は有楽町朝日ホールでかなり大きめのホールですが、700名ほぼ満席状態でした。そして10代20代30代と若めの方が多い印象でした。
早速内容についてサクッとまとめていきたいと思います。
まず、コンテンツとしては
1. JAXA活動紹介(ビデオ)
2. 第4期中長期計画について(山川宏 JAXA理事長)←本記事
3. 宇宙観測探査船団の構築について(國中均 ISAS所長)←本記事
4. BepiColomboの最新状況について(早川基 ISAS BepiColomboマネージャ)←次回
5. パネルディスカッション「宇宙開発・探査の意義と課題について」←次回
【パネリスト(敬称略)】
といった感じです。
1. については割愛させていただいてそれ以降について書いていきます。
第4期中長期計画について
JAXAは平成30年4月1日から新たに第4期中長期計画を掲げています。
これについて新理事長である山川さんから簡単に述べられていました。
計画について説明する前に、現在の宇宙業界の環境の変化について軽くおさらいしておくと、
国内では
・宇宙産業ビジョン2030 (内閣府)
・ベンチャー支援のパッケージ提供
国外では
・発展途上国の宇宙産業参入(南アフリカ、ナイジェリア、アルジェリアでは衛星を用いた通信、放送、画像取得に力を入れ始めている)
・ベンチャーの台頭(space X、Blue origin...)
といった変革が起きています。特に国外の変化スピードは目覚ましく、日本もその波に乗ろうと新しく計画を練り直したわけです。 その内容が...
JAXAの4本の柱(中長期経営計画)
(1)安全保障の確保
スペースデブリの除去、災害時のインフラ確保など
(2)宇宙利用拡大と産業振興
J-SPARC(JAXAが主導するビジネス創生プラットフォーム)の設置。
また、主に以下の3つの軸での振興。
人類の活動領域を広げる
軌道、遠隔操作技術
社会課題解決
ビッグデータ、AI
楽しむ
衣食住、VR
(3)宇宙科学、探査
ISEF2を受け、国際宇宙探査センターを2018.7に設置
⇒JAXAが優位性を持っている分野(サンプルリターン、補給機等)で国際協力。
(4)航空産業振興、国際競争力強化
JAXAの乱気流検知装置が、ボーイング社に高く評価される。今後民生品に導入へ。
国土交通省によると我が国の半分以上の航空機事故は乱気流によるもの(2010年)。
上記の4つの指標が今後JAXAが力を入れていく分野と言えます。
もちろん全部重要なのですが、中でも産業振興の重要性についてはかなり意識しているようでした。
宇宙観測探査船団の構築について
続いて、ISAS(宇宙科学研究所)所長の國中均さんから、今後の宇宙科学観測・探査の展望について語られました。
具体的には以下に説明するX線・赤外線・マイクロ波という幅広い波長域での(i)マルチ観測、(ii)惑星探査、(iii)小惑星や彗星探査といった視点でJAXAによる広大な宇宙探査ネットワークを作ろうというものです。
( i )多波長観測
ひとみ衛星が2016年3月に打ち上げられ、プログラムミス、人為的なミスにより失敗に終わってしまってことは記憶に新しいですが、新たなに2020年代前半を目標にひとみ2号機としてXRISM衛星プロジェクトが始動しています。
実際、ひとみ衛星を失ったことによって世界のX線天文学は10年間新しい衛星がない状態が続き、その分研究も遅れるだろうと言われていたので、このプロジェクトは成功してほしいですね。
ひとみ衛星に搭載された軟X線分光検出器(SXS: Soft X-ray Spectrometer)は世界最高のエネルギー分解能を誇る検出器で、観測が本格始動する前の試験観測だけでNature級の発見をしています。XRISM衛星は予算が半額程度になっているので、検出器搭載数は減っていますが、このSXSは搭載するようです。
Hitomi Mission Charts Hot Winds of Galaxy Cluster for First Time | NASA
赤外線
続いて赤外線天文衛星SPICAが2027-2028年の打ち上げを目指して欧州と協力の下、プロジェクトが進行中です。
観測目標は "銀河進化を通しての重元素とダストによる宇宙の豊穣化" および "生命居住可能な世界に至る惑星系形成" となっています。
最後にCMB偏光観測小型科学衛星 LiteBirdが2020年代半ばの打上げを目指して概念設計に従事しています。
現在、KEK、東京大学カブリIPMU、JAXA、岡山大学、国立天文台、カリフォルニア大学バークレー校、マックスプランク宇宙物理学研究所などから総勢130名以上の研究者がLiteBIRDワーキンググループに参加しています。
CMBとはCosmic Microwave Background(宇宙マイクロ波背景放射)と呼ばれ、ビッグバン後の宇宙の晴れ上がりのときに宇宙に満ちていた3000Kの電磁波が、宇宙の膨張と共に引き伸ばされ約2.7Kの電磁波として現在観測される「宇宙始まりの光」です。
そしてビッグバンが宇宙の始まりと思っている方もいるでしょうが、現在の宇宙を見るとあまりに均一な密度(どの方向をみても同じ密度)であり、これを説明するためには、ビッグバン以前に急激な膨張=インフレーションがあったとする説が主流になっています。簡単にいうと物質が引力によって集まり出す前にそれを上回る速度で膨張させちゃえ!というわけです。
この理論は1981年に日本人の佐藤勝彦さんによって提唱されました。
前置きが長くなりましが、今回打ち上げられるLite Bird衛星はこのインフレーション理論の証拠を探すための衛星です。
インフレーションの際、急激な膨張により時空が歪み原始重力波が生まれます。するとCMB偏光(電磁波の偏り)の分布に特殊な渦巻きパターン(「Bモード偏光」という名前がついています)が刻印されると予想されています。これを検出すれば、インフレーションの動かぬ証拠です。
( ii )惑星探査
2020年代までに水星から木星まで全ての惑星に衛星を送り込む計画を、JAXA Deep Space Fleetと呼んでいます。
水星:Bepi Colombo
金星:あかつき
地球:様々
火星:MMX(火星衛星サンプルリターン計画)
( iii )小天体探査
小惑星、宇宙塵、彗星を探査することで、地球にいつどうやって水がもたらされたかを明らかにする。
はやぶさ2が6月にリュウグウに到着したことは世間を賑わせました。
ちなみに個人的に面白かったのが、光の反射率によって小惑星の組成が分かるというお話。
:ケイ酸鉄やケイ酸マグネシウムなどの石質の物質を主成分とする小惑星であり、既知の小惑星の約17パーセントを占める
:炭素系の物質を主成分とする小惑星であり、既知の小惑星の約75パーセントがC型小惑星である
ということで今回はJAXAシンポジウム2018のまとめ(1)でした!
次は後半についてまとめていきます。